$\ymkk{着眼}$ まず,「2交点の距離が $\sqrt2$」の処理が肝心です.「式」を持ち出す前に,まずは図形そのものを!「円と直線の位置関係」といえば・・・,そう,「円と直線の距離」に注目ですね.
それを利用して,点 P と点 R の関係を考えます.ここでも,「式」に頼ろうとする前に,「図形そのもの」をちゃんと見てください.

$\smkk{解答}$ $l_1$ と $C$ の交点 A,B を下図のようにとる.
△OAQ$_1$ に注目して, $\mr{AQ}_1=\bun12\cdot\mr{AB}=\bun1{\sqrt2}$ だから \begin{align*} \mr{OQ}_1=\sqrt{1-\prn{\bun1{\sqrt2}}^2}=\bun1{\sqrt2}.\ \cdots① \end{align*}
また,$\angle\mr{OQ}_1\mr{P}=90\ds$ であり,$\mr{Q}_2$ は直線 OP に関して $\mr{Q}_1$ と対称だから,線分 $\mr{Q}_1$$\mr{Q}_2$ の中点 R は右図のようになる.△ORQ$_1$∽ △OQ$_1$P より \begin{align*} &\mr{OQ}_1:\mr{OR}=\mr{OP}:\mr{OQ}_1. \end{align*} これと①より \begin{align*} \mr{OP}\cdot\mr{OR}={\mr{OQ}_1}^2=\bun12.\ \cdots② \end{align*} P $(x,y)$,R$(X,Y)$ とおくと,②を用いて \begin{align*} x=&\bun{\mr{OP}}{\mr{OR}}X=\bun1{2\mr{OR}^2}X=\bun{X}{2\prn{X^2+Y^2}}.\ \cdots③ \end{align*} 同様にして \begin{align*} y=&\bun{Y}{2\prn{X^2+Y^2}}.\ \cdots④ \end{align*} P が $D$ 上にあるための条件は,③ ,④を $D$ の式 $x^2+y^2-2x=0$,$x\geqq1$ に代入して \begin{align*} \lbrc{ \brc{\bun{X}{2\prn{X^2+Y^2}}}^2+\brc{\bun{Y}{2\prn{X^2+Y^2}}}^2-2\cdot\bun{X}{2\prn{X^2+Y^2}}=0,\ \cdots⑤\\ \bun{X}{2\prn{X^2+Y^2}}\geqq1.\ \cdots⑥ } \end{align*} $X^2+Y^2\ne0$,つまり $(X,Y)\ne(0,0)$ のもとでこれらを変形する.⑤は \begin{align*} &\bun{X^2+Y^2}{4\prn{X^2+Y^2}^2}-\bun{X}{X^2+Y^2}=0, \ つまり\ X=\bun14. \end{align*} $X^2+Y^2\gt0$ より,⑥は \begin{align*} &\bun X2\geqq X^2+Y^2,\ つまり\ X^2+Y^2-\bun X2\leqq0. \end{align*}
よって,Pが $D$ 上を動くとき,R は右図の線分 $D'$ 上を動く.(このとき R は $(X,Y)\ne(0,0)$ も満たす.)
次に,P が $E$ 上にあるための条件は,③,④を \begin{align*} E:x=1,-1\leqq y\leqq1 \end{align*} に代入して \begin{align*} \lbrc{ &\bun{X}{2\prn{X^2+Y^2}}=1,\ \cdots⑦\\ &-1\leqq\bun{Y}{2\prn{X^2+Y^2}}\leqq1.\ \cdots⑧ } \end{align*} $X^2+Y^2\ne0$,つまり $(X,Y)\ne(0,0)$ のもとでこれらを変形する.⑦は \begin{align*} &X^2+Y^2-\bun{X}2=0. \end{align*} $X^2+Y^2\gt0$ より,⑧は \begin{align*} &X^2+Y^2+\bun Y2\geqq0,\ X^2+Y^2-\bun Y2\geqq0. \end{align*} よって,Pが $E$ 上を動くとき,R は下図左の円弧 $E'$ 上を動く.(このとき R は $(X,Y)\ne(0,0)$ も満たす.)
以上より,P の軌跡は, $D'$,$E'$ を合わせた図形(上図右)であり,その長さは \begin{align*} 2\cdot\bun14+\bun12\times 2\pi\cdot \bun14=\bun{\boxed{1}^{ア}}{\boxed{2}^{イ}}+\bun{\boxed{1}^{ウ}}{\boxed{4}^{エ}}\pi. \end{align*}
$\smkk{解説}$

$F$ 上の 1 点 P を通る直線 $l_1$(および$l_2$) を決定する条件として,「問題」には円と交わる2交点間の距離(右図のAB)が書かれていますが,その距離自体を「円と直線の方程式を連立して・・・」などと 「式」 で論じようとするのは失敗です.「円と直線の位置関係」を論ずる際には,まずは,右図の直角三角形に注目し,「円の中心と直線の距離」(右図のOQ$_1$ )を 「図形」 的に考えるのが鉄則です.とくに本問では,「線分 Q$_1$Q$_2$ の中点 R」の軌跡が問われているのですから,Q$_1$(あるいはQ$_2$)を含む線分に注目するのが良策となります.
結局のところ,「OQ$_1=\bun1{\sqrt2}$」さえ押さえてしまえば,$C$ と $l_1$ の交点A,B は本問に関与しなくなりますね.ですから実は,右図のような原点 O を中心とする半径 $\bun1{\sqrt2}$ の円 $C'$ へ,点P から引いた2本の「接線」の接点をQ$_1$,Q$_2$ と定めても,まったく同じ問題となります.
なお,「円の中心と直線の距離」を求めるときには「点と直線の距離公式」を用いることが多いですが,本問では直線 $l_1$ の方程式を持ち出すことすら不要なので,この公式の出番はありません.

OQ$_1$(およびOQ$_2$)の長さがわかった上で,点 P が動くときの点 R の軌跡を求めようとすれば,ごく自然に右のような図形に注目することになります.
まず,この図形全体は直線 OP に関して対称であり,R は半直線 OP 上にあることがわかります.あとは,原点 O から P,R に到る距離がわかれば,2点 P,R の位置関係を捉えることができますね.
その「距離」を考えるには,相似な三角形に注目すると簡便です.△ORQ$_1$ と △OQ$_1$P は,$\angle$O を共有する直角三角形なので,相似になっていますね.これを用いると,$\smkk{解答}$ の②が即座に得られます.
ここに現れた相似三角形は,ひじょうに有名かつ頻出ですから目に焼き付けておいてください.なお,本問では用いていませんが, △Q$_1$RP も前記2つの三角形と相似です.
ここで見た通り,PとRの関係は,「線」のみで構成された図形によって定まります.じつは,「円」という線に関する問題の多くがこのようにして解決します.そもそも「円」とは,「平面上において定点からの距離が一定である点の軌跡」ですから,「距離」,すなわち真っすぐな線分に注目するのは,ある意味当然なのです.
以上で,2点 P,R の関係を
  • R は半直線 OP 上にある
  • $\mr{OP}\cdot\mr{OR}=\bun12.\ \cdots②$
と「図形的に」捉えることが完了しました.

ここまで来て初めて「式」の出番です.P の座標 $(x,y)$ と R の座標 $(X,Y)$ の関係式を作りましょう.
このとき重要なのは,
最終的に何を求めたいのか?
をしっかりと意識することです.
2点の置かれた状況を概観すると次のようになっています. \begin{align*} \mr{P}\ (x,y)\ \cdots\ &図形D,E 上にある.←\uliner{既知}\\ \mr{R}\ (X,Y)\ \cdots\ &図形D',E' 上にある.←\uliner{未知} \end{align*} 「最終的に求めたいもの」は,「未知なる点 $\mr{R}$ の座標 $(X,Y)$ に関する条件式」であり,「既知なる点 $\mr{P}$ の座標 $(x,y)$」は消去すべきものですね.こんなときの正しい手順は,次の通りです.
  1. 消去したい $x,y$ を,残したい $X,Y$ で表す.→$\smkk{解答}③④$
  2. それを,既知なる $(x,y)$ の条件式へ代入する.→$\smkk{解答}⑤⑥,⑦⑧$
これを意識せず,“なんとなく”式を作るとつい逆の操作をして失敗となりまーす!

それでは,前記の「手順 1°」の実行の仕方について説明します.$x$ と $X$ の関係式③ の作り方は次の通りです.
まず,右図において,$x$ と $X$ の比は,OP と OR の比と一致します.よって \begin{align*} x=&\bun{\mr{OP}}{\mr{OR}}X.\ (x,X\leqq0 でも\mr{OK}.) \end{align*} このとき,「手順 1°」を意識して,$x$ を $X$ で表します.その後も「手順 1°」に従い,$\bun{\mr{OP}}{\mr{OR}}$ を R$(X,Y)$ で表すことを考えます.②を用いれば簡単にできますね.$y$ と $Y$ の関係式④についても全く同様です.

③④式は,ベクトル(数学B)を学んだ人なら,両者まとめて次のように作れます. \begin{align*} \cvct{OP}=&\bun{\mr{OP}}{\mr{OR}}\cvct{OR}\\ =&\bun{1}{2\mr{OR}^2}\cvct{OR}\ (\bcs ②).\\ \ie\ \pmx{x\\y}=&\bun{1}{2\prn{X^2+Y^2}}\pmx{X\\Y}. \end{align*} なお,ベクトルの成分は,$\pmx{x\\y}$ のように縦に並べるのが本式です.

P が $D$ 上を動くときを考えると,③④をの 「手順 2°」に従って $D$ の方程式に代入することで,$X,Y$ の方程式⑤が得られました.これが,R $(X,Y)$ の軌跡を表す方程式です.
この代入作業を行う前に,$D$ の方程式を問題文の \begin{align*} (x-1)^2+y^2=1\ \cdots⑨ \end{align*} から \begin{align*} x^2+y^2-2x=0 \end{align*} へと変形しています.これは,「$x^2+y^2$」へ③,④を代入すれば,分子に「$X^2+Y^2$」が現れ,約分が行われることを見越して行っています.もちろん,それが見抜けなければ,⑨へそのまま代入しても構いません.
あと一つ注意すべきことは,⑤を整理した $\bun{1}{4\prn{X^2+Y^2}}-\bun{X}{X^2+Y^2}=0$ から $X=\bun14$ へと分母 $X^2+Y^2$ を“払う”際,その分母が「0 ではない」という前提条件を書き残すことです.(本問では結果としてそれを忘れても答えは当たりますが.)

$D$ を表す式は,前述の「方程式」だけではありません.「不等式 $x\geqq1$ 」へ③を代入することも怠らないように!こうして得られた $X,Y$ に関する不等式⑥から,P が $D$ 上を動くときの R の軌跡は,⑤から得た直線 $X=\bun14$ のうち,円 $X^2+Y^2-\bun X2=0$ の内部または周に含まれる部分であることがわかります.
なお,分数不等式の分母を“払う”際にはその符号に注意しましょう.今回の⑥ではその分母:$X^2+Y^2$ が正なので不等号の向きは変わりませんが,分母が負である場合にはそうは行きませんよ.

⑦を変形して得られた方程式 \begin{align*} X^2+Y^2-\bun X2=0\ \cdots⑩ \end{align*} が表す円は,「平方完成」した式 \begin{align*} \prn{X-\bun14}^2+Y^2=\prn{\bun14}^2 \end{align*} から中心,半径を読み取って描くこともできますが,実はその必要はありません.
円⑩の方程式には $Y$ の項がないので,その中心は $x$ 軸上にあることがわかり,円⑩と $x$ 軸の共有点は \begin{align*} X^2+0^2-\bun X2=0\ より\ X=0,\bun12. \end{align*} よって,円⑩は右のように図示できます.
もちろん,軌跡 $D'$ の表現に現れる領域 $X^2+Y^2-\bun X2\leqq0$ などの捉え方も同様です.

ここは,三角比(数学Ⅰ)および三角関数(数学Ⅱ)に“習熟”した人向けの内容です.
$\alpha=\angle\mr{Q}_1\mr{OR}$ とおくと,△ORQ$_1$ に注目して \begin{align*} \mr{OR}=\mr{OQ}_1\cos\alpha. \end{align*} △OQ$_1$P に注目して \begin{align*} \mr{OP}=\bun{\mr{OQ}_1}{\cos\alpha}. \end{align*} これらを辺々掛けて,$\mr{OQ}_1=\bun1{\sqrt2}$ を用いると \begin{align*} \mr{OP}\cdot\mr{OR}=\bun12.\ \cdots② \end{align*}
P が半円 $D$ 上にあるとき,図のように角 $\theta\ \prn{-\bun{\pi}2\leqq\theta\leqq\bun{\pi}2}$ をとると \begin{align*} \mr{OP}=2\times1\cdot\cos\bun{\nrm{\theta}}2=2\cos\bun{\theta}2. \end{align*} これと②より \begin{align*} \mr{OR}=&\bun{1}{4\cos\bun{\theta}2}. \end{align*} よって,R$(X,Y)$ とおくと \begin{align*} \lbrc{ X=\bun{1}{4\cos\bun{\theta}2}\cdot \cos\bun{\theta}2=\bun14,\\ Y=\bun{1}{4\cos\bun{\theta}2}\cdot \sin\bun{\theta}2=\bun14\tan\bun{\theta}2 } \ \prn{-\bun{\pi}4\leqq\bun{\theta}2\leqq\bun{\pi}4}. \end{align*} よって,Pが $D$ 上を動くときの R の軌跡は, \begin{align*} 線分 D':\ X=\bun14\ \prn{-\bun14\leqq Y\leqq\bun14}. \end{align*}
P が線分 $E$ 上にあるとき,図のように角 $\varphi\ \prn{-\bun{\pi}4\leqq\varphi\leqq\bun{\pi}4}$ をとると \begin{align*} \mr{OP}=\bun1{\cos\nrm{\varphi}}=\bun1{\cos\varphi}. \end{align*} これと②より \begin{align*} \mr{OR}=&\bun{\cos\varphi}2. \end{align*} よって,R$(X,Y)$ とおくと \begin{align*} \lbrc{ X=\bun{\cos\varphi}2\cdot \cos\varphi=\bun14+\bun14\cos2\varphi,\\ Y=\bun{\cos\varphi}2\cdot \sin\varphi=\bun14\sin2\varphi } \ \prn{-\bun{\pi}2\leqq2\varphi\leqq\bun{\pi}2}. \end{align*}
よって,Pが $E$ 上を動くときの R の軌跡は,次のような円弧 $E'$ である.

これで,$\smkk{解答}$ と同じ結果が得られます.

点 P を, で述べた関係:
  • R は半直線 OP 上にある
  • $\mr{OP}\cdot\mr{OR}=\bun12.\ \cdots②$
を満たす点 R に移すことは,「反転」と呼ばれる有名なものです.
さて,図形 $D,E$ に対して「反転」を行った結果得られた図形 $D',E'$ は,右図のように元の図形 $D,E$ とそっくりな形をしています.しかし,注意して見ると次のようになっています. \begin{align*} 半円 D\ \xrightarrow[反転]{}&\ 線分D'\\ 線分 E\ \xrightarrow[反転]{}&\ 半円E' \end{align*} つまり,半円と線分がお互いに移り合っている訳です.

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