第2弾 解答・解説
$\mathbf{<方針>}$ (2)の等式の左辺は因数分解できます.すると,(1)で誘導された「整式の除法」とのつながりが見えてきます.
(1) $$\eqalign{ x^2+7x+49=(x-7)(x+14)+147.\cdots① }$$ よって求めるものは $$\eqalign{ 商:x+\boxed{14}^{アイ},余り:\ \boxed{147}^{ウエオ}. }$$
(2)
与式を変形すると
$$\eqalign{
&a^3-7^3=p^b,つまり\\
&(a-7)\underbrace{(a^2+7a+49)}_{Aとおく}=p^b.\cdots②
}$$
$p$ は素数だから, $a-7,A$ は $p$ 以外の素因数をもち得ない.よって
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
a-7=p^k,\\
A=p^{b-k}
\end{array}
\cdots③
\right.
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
&(k は0以上の整数でk< b-k)
\end{eqnarray}
と表せる. ($\because\ a>0$ より $a-7< A$.)
以下,③における $k$ の値によって場合分けする.
i) $k=0$ のとき,③は
$$\eqalign{
\left\{
\begin{array}{l}
a-7=1,\\
A=p^b.
\end{array}
\right.
}$$
$$\eqalign{
つまり
\left\{
\begin{array}{l}
a=8,\\
p^b=169(=13^2).
\end{array}
\right.
}$$
第2式を満たす自然数 $b$ と素数 $p$ の組は,
$$\eqalign{
(b,p)=(2,13)
}$$
のみである.
ii) $k\geqq1$ のとき,③において $b-k>1$ だから
$$\eqalign{
p は A と a-7 の共通な素因数である.\cdots④
}$$
一方,①において $x=a$ とすると
$$\eqalign{
&A=(a-7)(a+14)+147.\cdots⑤
}$$
これと互除法の原理より
$$\eqalign{
G(A,a-7)=&G(a-7,147).
}$$
$147=3\cdot 7^2$ だから
$$\eqalign{
G(A,a-7)は,3\cdot 7^2の約数.\cdots⑥
}$$
④,⑥より
$$\eqalign{
p=3 または 7.
}$$
$p=3$ のとき,③において 仮に $k\geqq2$ だとしたら,$b-k>2$ より $3^2$ が $a-7$ と $A$ の公約数となり⑥に反す.よって $k=1$ に限られ,
$$\eqalign{
\left\{
\begin{array}{l}
a-7=3,\\
A=3^{b-1}.
\end{array}
\right.i.e.
\left\{
\begin{array}{l}
a=10,\\
3^{b-1}=219.
\end{array}
\right.\cdots⑦
}$$
219は3の整数乗ではないから,これを満たす自然数 $b$ は存在しない.
次に$p=7$ のとき,③において 仮に $k\geqq3$ だとしたら,$b-k>3$ より $7^3$ が $a-7$ と $A$ の公約数となり⑥に反す.よって $k=1 または 2$ に限られ,
$$\eqalign{
&ア)
\left\{
\begin{array}{l}
a-7=7,\\
A=7^{b-1}
\end{array}
\right.
\ or
イ)
\left\{
\begin{array}{l}
a-7=7^2,\\
A=7^{b-2}.
\end{array}
\right.
}$$
ア)のとき, $a=14$ であり
$$\eqalign{
A=&14^2+7\cdot 14+7^2\\
=&7^2(4+2+1)=7^3\ より\\
7^{b-1}=&7^3.\ \therefore b=4.
}$$
イ)のとき, $a=56$ であり
$$\eqalign{
A=&(7\cdot 8)^2+7\cdot 7\cdot 8+7^2\\
=&7^2(64+8+1)=7^2\cdot 73\ より\\
&7^{b-2}=7^2\cdot 73.\\
これを&満たす自然数 b はない.
}$$
まず最初に,本問におけるキーワードである「素数」をめぐる基本事項を簡単に説明しておきます.
$[1]$ 整数の除法
任意の整数 $x,y\ (ただし y>0)$ に対し
$$\eqalign{
x=yq+r\ (0\leqq r< y)\cdots (\ast)
}$$
をみたす整数 $q$,$r$ がただ1組存在する.このような $q$,$r$ を,それぞれ$x$ を $y$ で割ったときの商,余りという
$[2]$ 約数・倍数
$(\ast)$においてとくに $r=0$ ,つまり
$$\eqalign{
x=yq
}$$
と表せるとき,$x$ は $y$ で割り切れる($y$ は $x$ を割り切る)という.また,このとき
$$\eqalign{
&xはyの倍数である\ (yはxの約数である)
}$$
という.
$[3]$ 公約数
2つ(以上)の整数 $x,y(,\cdots$)に共通な約数を,それぞれ $x,y (,\cdots)$の公約数という.公約数の中で最大のものを最大公約数 ${(G.C.D. : greatest\ common\ divisor)}$ といい,
$$\eqalign{
記号\ (x,y,\cdots)
}$$
で表すことがある.(本問【解答】では,「組$(a,b,p)$」などとの混同を避けるために「$G(x,y)$」と表した.)
一般に,「公約数は最大公約数の約数」である.
$[4]$ 素数
ちょうど2つの正の約数をもつ正整数,すなわち,1と自分自身以外に約数をもたない
正整数(ただし1を除く)を素数という.また,素数である約数のことを素因数という.
素因数に注目することで,全ての自然数(正の整数)は,次の3種類に分類される.
$$\eqalign{
\left\{
\begin{array}{l}
1\hskip10mm(素因数をもたない)\\
素数\\
合成数(2個以上の素数の積で表される)
\end{array}
\right.
}$$
$\mathbf{{定理:「素因数分解の一意性」}}$
1を除く任意の正整数 $n$ は,異なる素数 $p$,$q$,$r$,$\cdots$ と正整数 $\alpha,\beta,\gamma, \cdots $ を用いて
$$\eqalign{
n=p^\alpha q^\beta r^\gamma\cdots
}$$
の形に(現れる素数の順序を除いて)ただ1通りに表される.この式の右辺を $n$ の素因数分解という.
$[5]$ 互いに素
2つ(以上)の整数 $x,y(,\cdots)$に共通素因数がないとき,これらの整数は互いに素であるという.次の3つは,すべて同じことを言い表している.
$$\eqalign{
\left\{
\begin{array}{l}
「互いに素」\\
「共通素因数をもたない」\\
「最大公約数が 1」
\end{array}
\right.
}$$
本問の(2)では,与式の左辺が因数分解でき,②:
$$\eqalign{
(a-7)\underbrace{(a^2+7a+49)}_{Aとおく}=p^b.
}$$
を得ます.すると,次の2つの考えが浮かぶでしょう.
- 2つの因数 $a-7,a^2+7a+49$ は,どちらも(1)で登場した式の $x$ に整数 $a$ を代入したもの.どうやら,(1)の結果が利用できそう.
- 2つの因数 $a-7,A$ に対し,右辺にある $b$ 個の素因数 $p$ がそれぞれに何個ずつ“配分”されるのだろうか?
③を見ると,前記
のような基本が身についている人なら,ごく自然に
ただし,$k=0$,つまり $a-7$ が素因数 $p$ を1つも持たないときは例外ですのでご注意を.その場合を処理したのが【解答】(2)の「場合i)」です.
さて,それでは「場合ii)」について考えます.$a-7$と$A$の公約数である素数 $p$ の値はいったい何でしょう?それを知るために,そもそも$a-7$と$A$の公約数は何であるかを知りたくなりますが・・・ちょっと難しいですね.そこで(1)が使えないかと考えてみます.
恒等式①の $x$ に整数 $a$ を代入して得られた⑤には,注目している2整数$a-7,A$が含まれます.しかも,もともと文字 $x$ の「整
式
」について除法を実行して得られた①を利用してできた等式ですから,当然,「整
数
」の除法を行ったときと同じ形をしています.ここまで言えばお分かりですね・・・
次の定理が本問の1つの重要ポイントでした.
【互除法の原理】
『[1]の$(\ast)$が成り立つとき,
$$\eqalign{
G(x,y)=G(y,r).\quad ←{最大公約数が一致}\ 』
}$$
($\mathbf{[証明]}$については後述)
等式⑤に「互除法の原理」を適用することにより, $a-7$ と $A$ の最大公約数は $147(3\cdot 7^2)$ という具体的な自然数の約数のどれかであることがわかりました.これは大きな進展ですね!
(なお,等式②を見て,すぐに1°の活用法=「互除法の原理」に気付けた人は,そちらから先に手をつけ,「$a-7$ と $A$ の最大公約数は何か」に注目して場合分けしていっても解決します.)
「場合ii)」においては,素数 $p$ は$a-7$と$A$の公約数であり,前記
[3]中で述べたように,「公約数は最大公約数の約数」ですから, $p$ は $3$ または $7$ のいずれかであることがわかりますね.あとは,$a-7$と$A$の最大公約数が $147$ の約数であることと, $147$ の素因数分解:$3\cdot 7^2$ における各素因数の次数が
$$\eqalign{
\left\{
\begin{array}{l}
素因数3\cdots1次\\
素因数7\cdots2次
\end{array}
\right.
}$$
であることに留意すれば,【解答】の⑦,ア),イ)の3つのケースに限られることがわかります.
$\mathbf{[「互除法の原理」の証明]}$
$$\eqalign{
x=yq+r\ (0\leqq r< y).\cdots(\ast)
}$$
$\circ$
ある整数 $d$ が $y,r$ の公約数ならば,$(\ast)$より,$d$ は $x$ の約数でもあるから $x,y$ の公約数である.
$\circ$
ある整数 $d$ が $x,y$ の公約数ならば,$(\ast)$を変形して得られる$r=x-yq$ より,$d$ は $r$ の約数でもあるから $y,r$ の公約数である.
以上より,$x,y$ の公約数全体の集合と $y,r$ の公約数全体の集合が一致するから,それぞれの最大公約数どうしも等しい. (証明終り)
ここで注意してほしいのは,前記証明において,$(\ast)$の中で使っているのは等式 $x=yq+r$ のみであり,不等式 $0\leqq r< y$ は一切用いていないという事実です.つまり【互除法の原理】は,「$x=yq+r$」という形の等式さえあれば使えるという訳です.
本問(2)の等式: $A=(a-7)(a+14)+147$ において,$147< a-7$ とは限りませんので,「$147$ は,整数 $A$ を整数 $a-7$ で割った余りである」とは言えません.でも,互除法の原理は使えて
$$\eqalign{
G(A,a-7)=G(a-7,147)
}$$
はちゃんと成り立つのです.
前記証明を見てもわかる通り,「互除法の原理」とは実はごく単純なものですので,「互除法の原理」を使っているという意識を持たないまま,$A,a-7$ の共通素因数が $3,7$ に限られることに気付いて解けてしまった人もいることでしょう.
「場合ii)」では,等式
$$\eqalign{
&A=(a-7)(a+14)+147, つまり\\
&3\cdot 7^2=A-(a-7)(a+14)
}$$
において, $A,a-7$ がいずれも $p$ の倍数ですから, $3\cdot 7^2$ も $p$ の倍数,つまり素数 $p$ は $3\cdot 7^2$ の約数なので $3$ または $7$ であることがとわかりますね.
とはいえ,「互除法の原理」は大変有力な手段です.「あ.互除法の原理が使える形だ!」ということがズバッと見抜けるようにしておきたいものです.
まとめです.本問がなぜ“解ける”のか・・・
どうして $343$ を $7^3$ と変形できるのですか?
「素因数分解」が習慣づいているからです.
どうして③式のようになることが見抜けるのですか?
普段から「素因数」に注目しているからです.
どうして(1)が $G(A,a-7)$ を求めるのに役立つと気付けるのですか?
「互除法の原理」をマスターしているからです.
どうして整数の問題が解けるのですか.?
「整数」の基本体系が備わっているからです.
それが全てです.
$\mathbf{{注}}$ 本問(2)では,組 $(a,b,p)$ が何通りあるかを知られると“まぐれ当り”の可能性が増してしまうので,「 $a,b,p$ それぞれの和を問う」というやや不自然な問い方をしました.スイマセン!!

