京大入試は、問題を解くために、「発想力」と「記述力」を求められるのが特徴です。合格するには、教科別の出題傾向や大学側の出題意図などを踏まえた対策が欠かせません。
この記事では、京都大学の基本情報や入試の特徴・概要・対策ポイントに加え、合格した方の体験談など、進路として京大を視野にいれている方が押さえておくべき情報を、まとめてご紹介します。
※この記事は、2024年6月時点の情報です。
入試問題には、大学側の出題意図があります。これを正しく理解するためには、京大の基本理念や将来像・入学者に求めるものを確認しておくことが大切です。
まずは、京大合格をめざす上で押さえておきたい基本情報をご紹介します。
京大は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎とした基本理念を定めています。
※引用:京都大学「基本理念」
京大は基礎と応用、文系と理系の垣根を超えて研究を発展させることを基本理念としています。また、自由と調和を重視するとともに、地域社会はもちろん、世界での交流や貢献をめざす大学です。
京大は、どのような教育・研究機関でありたいのか、どういった人材を輩出することを目指すのかについて、下記のような将来像を示しています。
※引用:京都大学「将来像・長期目標」
将来像においても、倫理観に裏打ちされた自由なあり方、世界水準を目標とすることに言及しています。既成の枠組みにとらわれずに高みをめざす、チャレンジ精神のある人物を求めていることがわかります。
京大は、「対話を根幹とした自学自習」を教育に関する基本理念としています。有意義な対話を実現するため、入学希望者には「自ら積極的に取り組む主体性」が求められています。
学生は教えられるのを待つのではなく、自分から積極的にほかの学生や大学関係者などと交流をもち、深い知識や高度な技術を修めていくことが必要です。また、自由な視点から研究課題をみつけ、分析していく姿勢も求められるでしょう。
このようなあり方を実現できるよう、京大では、入学希望者に対して下記のような受け入れ方針を定めています。
※引用:京都大学「京都大学入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)」
京大入試は、「発想力」と「記述力」が求められるのが大きな特徴です。奇抜な問題が出題されるわけではありませんが、一見すると見慣れない問題が、国公立大の中でも飛びぬけて多く出題されます。
定番の問題の対策や暗記のみに頼らない思考力を養うことが大切です。ここでは、「発想力」と「記述力」とは具体的にどういうものか、説明します。
京大入試で求められる「発想力」とは、センスやひらめきだけではなく、原則や公式などを深く理解し、初めて見る問題にも応用できる力のことです。
京大の入試では、過去の出題例では見たことのないような問題が多く出題されます。問題のパターンを多数暗記していても対処が難しいので、発想力を養い、柔軟に対応できるようにしておく必要があります。
京大の入試問題は記述問題が多く、解答欄が大きく設けられています。これは、問題への解答だけでなく、答えを出すに至るまでの考え方の道筋などを論証させるためです。
結論が合っているだけでは十分な得点を得られないため、一貫性のある解答を素早く書き上げる記述力を養う必要があります。
京大入試の試験科目と配点、また合格要件についてご紹介します。
一般選抜の試験科目と配点は、学部によって異なります。ここでは、経済学部・工学部・総合人間学部の、試験科目と配点をご紹介します。そのほかの学部の詳しい試験科目と配点は、をご覧ください。
経済学部は、文系受験と理系受験があります。それぞれの共通テスト・個別(2次)試験の試験科目と配点、配点比率は、下記の通りです。
▼文系
なお、共通テストについて、理科は「物理」「化学」「生物」「地学」から2科目選択でも100点(満点)に換算して採用します。また、「公共、倫理」と「公共、政治・経済」の組み合わせは選択できません。
▼理系
工学部の共通テスト・個別(2次)試験の試験科目と配点、配点比率は、下記の通りです。
総合人間学部は、文系受験と理系受験があります。それぞれの共通テスト・個別(2次)試験の試験科目と配点、配点比率は、下記の通りです。
▼文系
共通テストにおける、国語・数学・外国語の得点は、ほかの教科と合わせて第1段階選抜のみに利用されます。また、理科は「物理」「化学」「生物」「地学」から2科目選択でも100点(満点)に換算して採用します。
▼理系
共通テストにおける、国語・数学・外国語・理科の得点は、ほかの教科と合わせて第1段階選抜のみに利用されます。
上記でご紹介した学部の2024年度前期入試における、満点・最高点(得点率)・最低点(得点率)・平均点(得点率)の一例は下記の通りです。
合格最低点は学部学科によって大きく異なりますが、全体では約57%です。合格者平均点は約62%になっており、最低点と平均点に大きな開きはありません。わずかな点差で合否がわかれるといえるでしょう。
共通テストで着実に得点を積み上げ、個別試験では解ける問題をミスなく回答することが重要です。
河合塾では、入試の難易度をボーダーライン(※)で示しています。河合塾では、大学入試の合否の可能性が50%に分かれるラインを、ボーダーラインとして公表しています。
京大の一般選抜において求められるボーダーラインは、偏差値60.0~72.5、共通テストの得点率78%~89%程度です。(2024年9月時点)
参考までに、先ほどご紹介した学部のボーダー偏差値、ボーダー得点率は、下記の通りです。
経済学部(文系)や総合人間学部(文系)は、人気のある学部だけに、ボーダー偏差値も高くなる傾向にあります。特に、総合人間学部(文系)は共通テスト得点率が88%と非常に高いため、得点を取れる問題を確実に解答し、もったいない失点を防ぐことが重要です。
京大のボーダーラインについて、詳しくは下記ページをご覧ください。
>>京都大学 偏差値(ボーダーライン)(河合塾の大学入試情報サイト Kei-Netへリンクします)
※ボーダーラインは大学入試の難易度を示すものであり、教育内容や社会的位置づけを表すものではありません。
京大国語の出題傾向と対策のポイントについてご紹介します。
筆者の日本語表現の巧みさが際立つ文学的で抽象的な文章を出題する傾向があるため、読解力が必要です。
また、高い表現力も求められます。すべてが記述問題なので、求められる記述の分量もかなり多く、問題文を抜き出して表現・文末などを変える程度では十分ではありません。
問題文を丁寧に読み込み、設問の主旨を正しく捉えて、自分なりの言葉で筆者の意図や文脈を過不足なくまとめる力が求められます。
京大国語の受験対策としては、日ごろから出題傾向に合ったジャンルの文章や本をたくさん読むことをおすすめします。抽象的な表現などに慣れるとともに、演習を数多くこなすことが大切です。理系も国語が必須なため、低学年のうちから対策を始めましょう。
特に現代文では、論理の流れや抽象的な表現が意味することを読み解けるように、演習をこなすことが重要です。論理展開を見極めるときは、「しかし」や「それでも」といった接続詞に着目するよう心がけると、全体の流れがつかみやすくなります。記述量も多いので、限られた時間で文章をまとめられるよう、練習しておきましょう。
また古文では、基本的な単語や文法の意味を正確にマスターし、文脈を正しく読解できるようにしましょう。わからない単語や文法などがあると、文章の全体像が読み解けなくなります。和歌の修辞に関する知識や、時代背景などの知識も身に付けておきましょう。
京大数学の出題傾向と対策のポイントについてご紹介します。
京大数学は、問題文の中に誘導がほとんどありません。過去のパターンを暗記してそれに当てはめることは難しく、自分で考えて解法にたどり着く必要があります。
また、別解をいくつも作れるような問題を出題することも、京大数学の特徴です。解答が1つではない問題を出して、受験生が独自性のある解法を提示することを、求めています。
さらに、解答に至るまでの過程を論理的に説明することも求められます。問題の構造をつかみ解法を考えるのに時間がかかるため、注意が必要です。解答の方針が立った後は手早く正確に計算する必要があります。
過程に誤りがあったり、説明が足りていなかったりすると、大幅に減点されます。また、過程が正しくても最終結果が間違っていれば部分点もほとんどもらえません。日頃から問題演習は最後まで計算し、確認する習慣をつけるようにしましょう。
受験対策でポイントとなるのが、発想力と論証力を身に付けることです。発想力は、これまでに見たことのないような問題に対し、「どのような解法を採用するか」自力で考え出すために欠かせません。京大の過去問など発想力を鍛えられる問題を数多く解き、くり返し考える訓練をして身に付けましょう。
論証力は、採点者にも伝わるように、最終結果に至るまでの過程を論理的に記述するために必要です。くり返し問題を解くだけでは他者に伝わる説明になっているのか判断しづらいので、第三者に採点・添削をしてもらいましょう。学校や予備校、塾の先生からのフィードバックをもらい、復習するのがおすすめです。
京大英語の出題傾向と勉強法のポイントをご紹介します。
京大英語は、出題傾向が年によって変わります。しかし、いずれの出題形式であっても、難易度の高い文章を自分なりに読み解き、設問の主旨を踏まえて自分の言葉で表現する力が求められることは、共通した傾向といえるでしょう。
年度によって出題傾向が変わりがちな京大英語では、どのような形式が出題されても、対応できるようにしておくことが大切です。
特に、設問で与えられた条件や英文の内容を正しく把握し、自分の意見や考えなどが採点者に的確に伝わるように表現することが求められます。他者に伝わるような表現力を養うためにも、英訳問題や和訳問題は、学校や予備校、塾の先生などに添削をしてもらうのがおすすめです。
また、論文の一部が、そのまま問題文に採用されるケースもあります。このような問題に対応するには、幅広い単語や文法の知識と、正確に使いこなす力が必須です。単語集をしっかりと読み込み、日本語・英語のいずれからでも、適切に訳せるようになっておきましょう。単に知識として覚えるだけでなく、本番同様に読解問題の中から構文を見つけ出したり、覚えた単語や文法を使って英作文の練習をしたりと、応用力を身に付けておくことが大切です。
長文読解では、正確に和訳できる力と、適切な長さでまとめる力を身に付けましょう。さらに、英文の1文ごとの構造をつかんで正確に読みこなす「精読力」も欠かせません。難易度の高い長文読解の問題などを解き、多少は時間をかけてでも、文章中でわからなかった語句・表現は、辞書で意味・用法を確認するのが効果的です。低学年のうちから時事問題やニュースについて自分なりの意見をもつ練習をしたり、幅広いジャンルの本を読んだりするのも有効な対策です。
和文英訳では、日本語の難解な表現を、まずは簡単な日本語に読み換えてから英訳する練習をくり返すと力がつきます。
京大地歴の各科目の出題傾向と対策のポイントを紹介します。
地理は、出題範囲にあまり偏りがなく、高校地理の全分野から出題される傾向にあります。基本的な知識を確実に身に付け、易しい問題を取りこぼすことのないようにしておきましょう。
また、全体的に設問に資料が多いことも特徴です。地図や統計に関する知識を身に付け、資料読解ができるようにしておく必要があります。位置関係・分布など、地理的な情報を理解していないと答えづらい問題も頻繫に出題されるので、学習時は地図帳を積極的に用いて、知識と地図を紐づけておきましょう。
さらに、簡潔に論述できるよう、要約スキルや表現力を磨いておくことも大切です。誰が読んでもわかりやすい説明を限られた文字数でまとめられるよう、反復して練習しましょう。なお、字数指定のない論述問題では、解答欄のサイズに応じた適切な文字数を判断し、過不足なく情報をまとめる必要があります。
日本史は、第一問から第三問まで、一問一答や空欄補充問題といった短答式の問題が出題される傾向にあります。幅広い年代・ジャンルから出題されるため、全年代・全ジャンルについて、正確な知識を満遍なく身に付けておきましょう。設問数が多いので、素早く正確に解答できるよう、基礎を確実に押さえておくことが重要です。
また、マイナーな史料を取り上げる傾向があるといわれており、ほとんどの受験生にとって初見の問題を出されることが考えられます。見たことのない史料を読み解くには、史料に登場するキーワードや出典・設問文を手がかりに読解できるよう演習をこなすとともに、時代背景など関連知識も身に付けておくと良いでしょう。
さらに、200字の論述問題が2問出題されるのが定番です。簡潔な設問文から設問の意図を正確に読み取り、要求を満たす解答を論理的にまとめ上げる力が求められます。各年代・ジャンルにおける代表的なテーマについて出題されるケースもあるので、演習問題でよくみかけるテーマは、一度は解いておくようにしましょう。
世界史の問題は、日本史と同様に、幅広い年代・ジャンルから出題される傾向にあります。全年代の概略と、教科書で太字になっている語句の意味は、遅くとも受験する年の夏休み終了時までにマスターしましょう。意味の確認とあわせて論述問題を解いたり、知識を文章でまとめたりする対策も必要です。
また、「年代や地域はどう指示されているか」「問われているのは経緯なのか背景なのか」など、問題文で聞かれている内容を正確にくみ取り、的確に答えることも重要です。問われている内容ごとに解答の下書きを作成しておくと、スムーズに解答作成ができるようになるでしょう。
さらに、試験時間に対して問題数が多い傾向にあります。模試を受けるときに、内容に応じて解答する順番を変更するなど、限られた時間で得点を最大限伸ばす自分なりのコツを見つけましょう。
時間を計りながら、京大の入試問題と構成や問題数が同じ練習問題を解き、本番での時間配分を練習するのも有効です。
京大理科の各科目の出題傾向と対策のポイントを紹介します。
京大物理は設問の文章がとても長いため、まずは何を解答すべきかを把握することがポイントです。問題文中から解答のヒントを見つけるために、読解力をつけておきましょう。
また、設問数・計算量ともに多いのも特徴です。速やかにミスなく計算をこなせるよう、演習を積み重ねて計算力を身に付けましょう。なお、設問は空欄補充形式が多く、1か所間違えると続く設問の得点も得られなくなってしまいますので、注意が必要です。
設問が長く、設問数・計算量も多いと、必然的に時間が足りなくなります。そのため、「解ける問題を優先して確実に解く」という戦略が、合格するためには必要です。試験開始後は最初にすべての設問をざっくりと把握し、優先して解く問題と時間配分を決めましょう。
たとえ大問のなかで解けない設問があっても、ほかの設問は独立して解ける場合があります。諦めずにすべての設問をチェックすることが、合格につながります。
京大化学では、高校化学の内容を完全にマスターした上で、応用力を身に付けることが重要です。
また、高校レベルではあまり触れることのない題材について、空欄補充形式の設問が多く出題されます。初めて目にした題材であっても、その場で設問の文章を正確に理解し、自分で考える力が試されます。
なお、京大化学では、おおよそ半分が有機化学からの出題です。試験対策は、天然有機化合物の分野を優先させ、基本的な知識を早めに習得するとともに、演習を数多くこなしておきましょう。
天然有機化合物の分野が万全になったら、理論と無機についても基本を押さえておくことが必要です。どのような出題にも対応できるよう、理論・無機・有機と満遍なく学習しましょう。
京大生物は、受験生が自分で考察し、設問の指示に的確に答える形で論述できるかどうかを重視する傾向にあります。どの問題も、知識レベルは教科書に載っている範囲で十分なので、教科書と図説を読み込み、解ける問題で着実に点数を取りましょう。また、教科書で太字の語句は、関係する生命現象と組み合わせて説明できるようにしておくことが大切です。
見慣れない実験の手法やデータが、設問でよく取り上げられます。初めて目にする題材でも、ポイントを把握できるようになっておきましょう。設問の条件・結論などを、箇条書きにして整理する練習を重ねると、スムーズに対応しやすくなります。
また、論述問題が多いのも特徴です。採点が厳しく、論理展開や考察が不十分だと大幅に減点されるので、しっかりとした対策が必要です。
例えば、下記のような論述対策があります。
・「仮説→実験→結果→考察→仮説」の流れを整理する習慣をつける
・論述で押さえるべきキーワードを書き出す
・書いた後は、第三者に添削をしてもらう
ここでは、河合塾マナビスで学習し、京大へ現役合格した方の体験談をご紹介します。実際に受験を突破した方の感想や入試対策で気を付けていたこと、苦手科目の克服方法などを、これからの受験勉強の参考にしてみてください。
体験談をもっと読んでみたい方は、こちらを合わせてご覧ください。
京大入試は、「発想力」と「記述力」が求められるのが特徴です。教科書に載っている範囲の内容は確実にマスターするとともに、身に付けた知識を応用する練習や、採点者に伝わりやすい文章を簡潔にまとめる練習をしましょう。また、教科ごとの出題傾向にあわせた対策をしっかりと行うことも大切です。
河合塾マナビスでは、一人ひとりに合った学力の伸ばし方をご提案しており、多くの生徒が現役合格を実現しています。過去問講座も充実しているので、入会当初の志望校より難易度の高い大学に合格できたという受験生の方も少なくありません。
資料請求や、校舎訪問はこちらから、お気軽にお申し込みください。