皆さん暗算は得意ですか?暗算とは計算機や手書きの筆算に頼らずに、頭の中だけで計算を行う作業です。暗算を速くできるようになると、勉強だけでなく、受験や日常生活にもメリットがあります。今回は暗算のメリットや、暗算を速くするコツを紹介します。
計算は筆算でもできるし、今はスマホでも電卓が使えるので、日々の生活では無理に暗算をしなくても……そんな風に思う方もいるでしょう。もちろん答えを出すだけなら電卓でも可能ですが、答えを出す以外にも、暗算ができることで様々なメリットがあるのです。
暗算が速くできると、計算を多用する科目、数学や理科の成績アップが期待できます。数学や理科の勉強では「問題文を読む」「使う公式を当てはめる」「計算する」というステップを踏みます。
暗算ができるということは、筆算や電卓よりも計算速度が速くなるため、問題文を読んで理解してどの公式を使って解くか、ということに時間を割けます。結果的に問題文の読み違いが減ったり、テストの時間配分に余裕が生まれ、見直す時間に充てることが可能なため、成績アップが期待できるのです。
毎日の勉強に役立つのはもちろんのこと、勉強以外の日常生活でも暗算が活躍する機会は多くあります。一番分かりやすいのが買い物のときの計算です。
例えば「25%引きっていくらなの?」「150円で10個入りのお菓子と、200円で14個入りのお菓子、お得なのはどっち?」というように、計算は生活と密接に関係しています。こんなときに暗算ができるとすぐに答えが出せます。
では実際に暗算を速くできるようになるには、何をしたらよいのでしょうか?まずは暗算を効率的にするための頭の準備が必要になります。詳しく見ていきましょう。
暗算が得意になりたい人は、まずは1桁同士の足し算を瞬時にできるようになりましょう。
一般的に、数字の桁が多くなればなるほど計算は難しくなりますが、その中の計算のひとつひとつは全て1桁同士となります。その中でも、まずは四則演算の基本となる足し算を一瞬でできるようになりましょう。1桁と言っても侮ることなかれ。例えば6+8=14といった簡単なものでも、1の位が4になる!というスピード感が大事です。
次に、計算式を分解するクセをつけておくことです。複雑な数字や式を分解すると、暗算がしやすくなります。
例えば、169という数字は一見するとキリの悪い数字ですが、100と69に分解できます。100などのキリの良い数字に分解できると、計算がしやすいです。100と69以外にも、170-1、13×13といった考え方もできます。こういった分解のパターンを覚えて、すぐに使えるようにしましょう。
1桁+1桁の足し算、計算式の分解がマスターできてきたら、いよいよ暗算を速くする練習をしていきましょう。押さえておきたいコツ3つをご紹介します。
例えば78×6、69×4などの掛け算は、計算しやすい数に分解することで速く暗算できるようになります。
78×6
=(70×6)+(8×6) …78を70と8に分解し、それぞれに6を掛ける
=420+48
=468
69×4
=(70×4)−(1×4) …69を70−1と考える。70と1にそれぞれ4を掛ける
=280−4
=276
冒頭の準備のところでも解説したように、1桁同士の足し算が瞬時にできるようになると、それを活用することで2桁以上の数の足し算も速く暗算できるようになります。
27+45
・7+5は10を超えるので1の位の繰り上がりがありそう→10の位は(2+4+1=)7になる
・7+5は12なので1の位は2になる
→答えは72
例えば13−9など、引き算では繰り下がりが生じる場合があります。このような繰り下がり計算を楽にすることで、引き算の暗算をスピードアップできます。
13−9
13を10と3に分解
(10+3)−9にして、10−9を先に計算→1
1に3を足して4
145-69
145を100と45に分解
(100+45)-69にして100-69を先に計算→31
31に45を足して76
暗算を速くする計算方法の1つに、インドで子どもたちが学んでいるとされるインド式計算法があります。日本の小学校では1桁同士の掛け算である九九を覚えますが、インドの小学校では1〜19同士の掛け算を瞬時に計算する方法を習います。
インド式計算法は、掛け算の暗算に便利な考え方です。どんな計算にも使えるわけではありませんが、ぴったり条件にはまれば瞬時に答えを導くことができます。
例えば「10の位が同じ・1の位の合計が10の場合」や「10の位が同じ・1の位の合計が10でない場合」、「20〜90台の数値同士の場合」、「2桁同士の掛け算で片方が11の場合」、「2桁同士の掛け算で片方が99の場合」など、計算式によってどの計算方法を使うべきかが変わります。
どの計算方法を使うのかを瞬時に判断することで、暗算をスピードアップすることができます。
では早速、インド式計算法を使って掛け算を解いてみましょう。1〜19同士の掛け算の場合は以下の計算方法になります。
18×13
=(18+3)×10+(8×3)
18に、13の1の位を足して10を掛ける→(18+3)×10
それぞれの1の位を掛け算する→8×3=24
=21×10+24
=234
ではなぜ、このような計算方法で答えが出せるのでしょうか?掛け算は四角形の面積を求めるのと同じことなのです。インド式計算の原理を見てみましょう。
例えば18×13は18×13の四角形の面積を求めるのと同じことです。18を10と8、13を10と3に分解すると、図のようになります。
図の黒の四角形を移動すると、緑、青、黒の3つの四角形の面積の合計を一気に求めることができます。(18+3)×10=210
また、赤い四角形の面積がそれぞれの1の位を掛けた、8×3で24になります。
緑、青、黒、赤の4つの四角形の面積の合計は、210+24=234となります。
この原理を利用して、1〜19の数同士の掛け算を実際にやってみましょう。
12×14=(12+4)×10+(2×4)=16×10+8=160+8=168
17×15=(17+5)×10+(7×5)=22×10+35=220+35=255
19×19=(19+9)×10+(9×9)=28×10+81=280+81=361
暗算が速くなるコツを使いこなそう!
暗算を速くするためには、まずは1桁同士の計算など、頭のウォーミングアップから始めて、徐々にステップアップしていきましょう。いくら暗算のコツを知っていても、知識だけでは使いこなすことはできません。何度も復習し、同じ問題も繰り返し解いて自分のものにしていきましょう。
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