受験生にとって夏休みはまとまった勉強時間を確保できる大切な期間です。しかし期間が長いがゆえに、どのように過ごしたらよいか分からず困る人もいるようです。この記事では合格に近づくための、受験生の夏休みの過ごし方や勉強方法をお伝えします。
※この記事は、2024年8月時点の情報です。
時間がたくさん使えるからこそ、どの程度勉強に時間を使えばよいかわからない人もいると思います。ここでは夏休みに必要な勉強時間について解説します。
受験勉強に必要な時間は、高校3年間で平均約3,000時間だといわれています。つまり3,000時間を3年間の日数で割って、1日約3時間の勉強時間が必要になる計算です。
しかし部活動やアルバイトなどで勉強時間を確保するのが難しい人もいるでしょう。だからこそまとまった勉強時間を確保できる夏休みが受験において非常に大切なのです。
参考:高校生の勉強時間はどのくらい?難関大や国公立大受験を目指す人の勉強時間
高3生が夏休みに勉強にあてている時間は、1日平均7.6時間といわれています。高校生の夏休みは一般的に40日程度なので、毎日約8時間勉強すれば、夏休みだけで320時間の勉強時間を確保することが出来ます。ですがこれは平均的な勉強時間です。ライバルと差をつけるためには1日10時間の勉強を目指してみましょう。
10時間と聞くと長く感じてしまいますが、午前5時間、午後2.5時間、夜2.5時間と考えたらいかがでしょうか。大きな数字の塊で見ると難しそうに見えることもスケジュールを組むことで無理なく取り組むことができるはずです。時間配分を行い、勉強時間を積み上げましょう。
また、勉強時間を90分で区切るのもおすすめです。多くの大学入試では、1科目あたりの試験時間が90分に設定されています。そのため、普段から90分単位で勉強することで、実際の試験時間の感覚を身に付けられます。
夏休みにどのくらいの時間を勉強に費やせるかを理解した上で、ここでは受験生がすべき効率的な勉強の進め方について解説します。
長い夏休みはつい気持ちが緩みがちになり、勉強をしようと思っていても、「何もせずに過ごしてしまった」と後悔する声はよく聞かれます。そんな状況を防ぐためにも、まずは夏休みの勉強スケジュールを立てましょう。
基礎固めや苦手科目の克服など、具体的な目標を立て、どういう風に勉強するか週単位で割りふります。例えば、1週目は数学のこの単元を完璧にする、と決めて①授業の復習②テストの解き直し③問題集を2回、などの計画を曜日ごとに落とし込みます。問題集は1日〇ページやる、など決めるのも良いでしょう。
受験生の多くはすでに志望校を決めていると思いますが、まだ決まっていない場合は早めに検討しましょう。志望校が明確になると、学習計画を立てやすくなります。
また、すでに第1志望校を決めている方も、第2、第3の志望校を決めておくと良いでしょう。受験が迫った時期に慌てて情報収集や個別対策をしようとしても、思うように時間が取れなかったり間に合わなかったりする可能性があります。早いうちから余裕をもって取り組むことが大切です。
夏休みに必ず済ませておきたいのが基礎固めです。基礎ができていない状態では、応用問題や過去問を解くことができません。分からない教科は学年をさかのぼっても構わないので、このタイミングで基礎をしっかり固めましょう。
授業で分からなかったところや、テストで解けなかった問題などから、自分の理解が不十分と感じたところを潰していきます。また、英語の単語や熟語、文法など、暗記が必要なものもこの時期に積み上げておくと良いでしょう。
たくさんの時間を確保できる夏休みは苦手科目の克服に最適です。点数の取れない科目や自信の無い科目を洗い出して、夏休み中の克服を目指しましょう。そのためにはまず、簡単な問題など、確実にできるところから始めて、成功体験を積み重ね自信をつけるのが効果的です。
また、効率的に学力を上げるためには塾の夏期講習を活用するのも効果的です。分野別や理解度に合わせた講習が用意されているので、苦手科目を得点源へと変化させたい人は夏期講習の受講を検討しましょう。
夏休みのうちに共通テストや志望大学の過去問にもチャレンジしてみましょう。夏休みの時点では合格点まで届かなくても大丈夫です。その結果に一喜一憂する必要はありません。まずは「敵を知る」ことから始めましょう。出題形式や傾向を知ることで、秋以降の勉強計画を見直して冬本番を迎えるのが目的です。
受験生にとって、夏休みは貴重な学習期間です。ここでは、受験生の夏休みにおける学習ポイントを科目別にご紹介しますので、効率的に学習を進めるためのヒントにしてください。
英語の学習は、基礎力を高めるために単語・熟語などの語彙力アップと文法・語法の復習に取り組みましょう。
基礎固めは英文を正しく理解するための土台になります。まずは学校の教科書や基礎的な参考書の問題などを活用して、優先的に基礎を学習しましょう。基礎が身に付いたら過去問や大学入試レベルの問題集に移り演習を重ねると、効率的に進められます。
また、共通テスト対策として、速読力アップとリスニング強化もやっておきましょう。共通テストでは長文読解問題が出題されるため、英文をスピーディーに読み解く能力が求められます。
辞書がなくても読めるような多読向きの文章などを使って、文章全体の概要を掴む練習を行い、速読力をアップしましょう。
リスニング強化には、本番に近い実践的な問題を解いて慣れておくのが有効です。問題の1回読み・2回読みに慣れる、音声を聞いてメモを取ってみる、さまざまな音声の英語を聞いたり声に出して読んでみたりするなどの方法を実践してみましょう。
数学も英語と同じく、基礎固めを徹底しましょう。まず現時点で習っているところまで復習してみて、苦手な箇所や理解し切れていない部分を洗い出します。
間違えた問題・解けなかった問題から自分の苦手・理解不足が明確になったら、解説を確認して一から解き直す作業を繰り返します。教科書の例題のような基礎問題は、間違うことなく解けるようにすることが重要です。
共通テストの過去問を解くときには、何を問われているのかを分析・理解するよう心がけましょう。共通テストの数学の問題は文章量がかなり多いので、何度も過去問の解答を確認して読解力を養うことも大切です。
また、問われている内容は理解できていても、ケアレスミスで点が取れないこともあります。解き方や計算を間違えたときにすぐに気づけるようにしておきましょう。そのためには、問題用紙の余白で計算をするときに、できるだけ見やすい文字で丁寧に書くことが大切です。その際は、頭の中で計算を整理しながらひとつずつ解いていきましょう。
国語は現代文・古文・漢文で学習のポイントが異なります。
【現代文】
現代文は小説や評論など、さまざまなタイプの問題が出題されます。問題集などで複数の題材に取り組み、いろいろな文章を読めるようにしておきましょう。
また、現代文では文章と選択肢を正確に理解し、論理的に正解に辿り着くことが重要です。問題を解いて解説を確認し、正しく判断できているかを確認する作業を繰り返して、文章から正解に辿り着く根拠を見つけるスキルを鍛えましょう。
【古文】
古文は文章を正確に読めるかどうかが重要です。問題集を活用して、とにかくできるだけ多くの単語を覚え、古典文法をひと通り身に付けましょう。単語や文法が身に付いたら、文章を現代語に翻訳する練習をすると効果的です。
【漢文】
漢文は読解力を上げることが成績アップにつながります。重要な句形・単語や頻出表現を覚え、スムーズに文章を読めるようにしておきましょう。声に出して読んでみるのも、読解力や書き下し文を作成するスキルの向上につながります。
理科も物理・化学・生物で学習のポイントが異なります。
なお、理科は夏休みまでに全範囲の履修が終わっていないケースも少なくありません。先取り学習で教科書を1周することを目標にしましょう。
【物理】
物理はまず基本の法則と、その法則が成り立つ理由を理解し、覚えることが大切です。ただ暗記するだけで終わるのではなく、導出方法まで把握しておきましょう。
【化学】
化学は、教科書にある基礎知識を問われることが多いので、基礎固めを徹底しましょう。教科書の「まとめ」の内容から各項目の概要を把握した上で、詳細を理解する流れが効率的です。
基礎固めが完了したら、教科書の例題や過去問を解いてみて内容を理解できているかどうかを確認しましょう。
【生物】
生物も教科書にある基本的な内容を問われることが多いですが、ただ暗記するだけでは問題が解けません。用語を覚えるのとあわせて、他の事項との関係も理解しておきましょう。
化学と同様に、教科書の例題や過去問を解いてみて内容を理解できているかどうかを確認することも重要です。「生物」のすべての分野から幅広く出題されるため、全体的にバランス良く学んでおきましょう。
地理・歴史・公民も、科目ごとに学習ポイントが変わってきます。
なお、地歴・公民も夏休みまでに全範囲の履修が終わっていないケースが多い教科です。先取り学習で教科書を1周することを目標にしましょう。
【地理】
地理は図表や資料を読み取って解答する問題が多くあります。スムーズに読み取れるように、各地域の都市や言語、宗教、地形、気候などを暗記しておきましょう。農業地や鉱産資源なども覚える必要があります。特に教科書で強調されている用語や地名は、意味まで理解して覚えておきましょう。
【歴史】
日本史は、歴史的な概念の理解度や史料を読み取るスキルなどが問われます。できるだけ多く問題演習を行い、史料や地図、統計表、図版などを読み解き分析できるようにしておきましょう。
世界史では幅広い年代・ジャンルの問題が出題されます。用語だけ覚えるのではなく、歴史の背景や因果関係など縦と横のつながりまで意識して学ぶことが重要です。
【公民】
公民は基礎的な知識を身に付ける必要があります。単元別に基礎固めを行うのと同時に、演習問題集を解いて知識を定着させましょう。
期間が長い夏休みでは、頑張っていても勉強のやる気がなくなったり、生活リズムが乱れたりしがちです。ここでは夏休みにしっかりと結果を出すための自己管理やモチベーション維持の方法を解説します。
まずは規則正しい生活を心がけましょう。夏休みの勉強を乗り切るには、学校がある時とできるだけ同じ生活リズムを維持することが大切です。学校がある時と同じ時間に起きて、朝、昼、夜と1日の時間の中でバランスを取りながら勉強にあたりましょう。
また、勉強時間を確保しようとして徹夜をしたり、昼夜逆転したりしては生活リズムが乱れてしまいます。人は睡眠中に記憶を定着させるため、睡眠時間を削ってまで勉強するのは逆効果です。1日1日の努力を無駄にしないためにもきちんと睡眠時間を確保しましょう。
人間の集中力は、長時間続かないことがさまざまな研究結果から証明されています。休憩を取らずに続けても、効率が下がり逆効果です。1時間から1時間半程度勉強したら、10分程度の休憩を取りましょう。また、長い夏休み、時にはやる気の起きない日もあるでしょう。そんな時は少し長めに休憩を取ったり、運動する時間を挟んだりしてリフレッシュをしましょう。
どうしてもという場合は思い切って1日休んでしまうのもひとつの手です。やる気の出ないまま勉強をしていても効率が悪いので、息抜きをして気持ちを切り替えることで一回一回の勉強の質を上げましょう。
受験生にとって夏休みは重要な期間だとわかっていても、なかなかモチベーションが上がらないこともあるでしょう。そのようなときのおすすめの対処法をご紹介します。
集中力、モチベーションの維持のために、勉強する環境を変えてみるのもよいでしょう。勉強場所を変えると刺激で脳が活性化され、集中力が高まるといわれています。例えば、アメリカで行われた研究では、場所を移動しただけで、記憶力が40%以上も増えたという結果が出ました。
自宅にこもってばかりいると気が滅入ることもあります。場所を変えることは気分転換にもなります。特に図書館や自習室などは、家とは違い、誘惑も少なく、他の人も勉強しているので「自分も頑張ろう」という気持ちになるのでお勧めです。例えば、平日の午前中は図書館を利用するというようにスケジュールに組み込めば、生活リズムを整えるのにも役立ちます。
周囲の人と自分の学習状況を比較すると、焦りによってモチベーションが下がってしまうこともあります。あまり人が目に入らず、長時間自分の学習に集中できるスペースを見つけましょう。夏休みだけ塾に通うのもおすすめです。
悩み相談をしたりアドバイスをもらったりできる相手がいると、もしモチベーションが下がってしまっても持ち直しやすくなります。
また、自分に合う学習方法がわかっていないと漠然と勉強を進めてしまい、効率的に成績を上げることができません。結果として、時間を無駄にしてしまうことがあるため、学校の先生や塾の講師などに相談してやるべきことを明確にするのがおすすめです。
「河合塾マナビス」では、受験までのカリキュラムや年間・月間の学習計画をアドバイザーが一緒に考えます。
また、映像授業とチェックテスト後に必ずアドバイザーとショート面談を行うので、悩みを気軽に相談できます。大学受験に向けて成績を上げたいと考えている方は、ぜひ一度お問い合わせください。
夏休みの過ごし方は受験生の運命を大きく左右します。まずは基礎固めと苦手科目の克服をひとつのゴールに、スケジュールを立てて取り組みましょう。基礎ができていない状態で、一気にレベルアップしようと応用問題や入試レベルの問題に取り組むのはNGです。基礎を完璧にすることと、さらに苦手分野を潰すことで、得点源を増やすための土台づくりが完成します。
また、長い夏休みでは自己管理やモチベーション維持も欠かせません。有意義な夏休みにするためにも、計画を立てて勉強を進めましょう。
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